
ADNかBSNか、それともNPか?迷わないアメリカ正看護師ルート
日本の看護師資格を米国で活かすには主に二つのルートがあります。一つは「日本で免許を取得し、CGFNS※などで学歴・資格評価を受けてNCLEX(米国の看護師国家試験)を受験・合格する」方法です。
もう一つは「米国の看護養成課程に留学し、その過程でRN資格を取得する」方法です。
多くの方が日本の免許を書き換えるルートを考慮しますが、就職は難しい現実があります。結果的に、2つ目のアメリカで免許を取り直す人が多いのが実状です。
この記事では、それぞれのルートの特徴と選び方をわかりやすく解説します。
Index
アメリカで看護師(RN)になる3つのルートとは?
まずは感覚的に、グラフでざっくり概要を確認します。
ルート | 期間(年) | 費用(目安) | 英語力要件 | 永住権取得の可能性 |
---|---|---|---|---|
ADN | 約2年 | ★☆☆ | ★☆☆ | ★★☆ |
BSN | 約4年 | ★★☆ | ★★☆ | ★★★ |
NP | 6〜7年 | ★★★ | ★★★ | ★★★★ |
費用・期間・英語力・永住権取得可能性などの相対比較を示した図表です。★は目安としての相対評価(多いほど負担・可能性が高い)です。
詳しく見ていきましょう:
ADN:コストと期間を抑えてRNを目指す
ADN(Associate Degree in Nursing)は、主にコミュニティカレッジで提供されている2年制の看護課程です。プログラムを修了し、NCLEXに合格することで、正看護師として働くことが可能になります。
このルートの最大の魅力は、費用と期間の負担が比較的少ない点です。英語力に自信がない方でも比較的入学しやすく、留学生や社会人の再挑戦としても現実的な選択肢です。
「できるだけ早くRNとして現場に出たい」「まずはアメリカの医療現場で経験を積みたい」「英語力や資金に不安があるが、チャンスをつかみたい」といった方には、ADNルートは非常に適しています。
代表的な学校には、カリフォルニア州サンタモニカ・カレッジ、ワシントン州Queensborough Community Collegeや、ニューヨーク州La Guardia Community Collegeなどがあります。
入学には高卒相当の学歴証明や英文成績証明、語学力証明(TOEFL/iBT約45点・IELTS5.0以上など)が必要です。
卒業後はF-1ビザの資格で12ヶ月間のOPT(就労許可)が得られ、米国病院などで経験を積みながら就労ビザ(例:H-1B)や雇用主による永住権申請(EB-3)へ進む道が開けます。
一方で、ADNは学士号ではないため、キャリアの上限が早期に見えやすく、特にH-1Bビザや永住権の取得においては難易度が高くなる傾向があります。
BSN:将来のキャリアと選択肢を広げる
BSN(Bachelor of Science in Nursing)は、4年制大学で取得できる学士号です。近年、アメリカの多くの医療機関では、BSN保持者を優先的に採用する動きが強まっており、より高度な職務やリーダーシップのポジションにも就きやすくなります。
BSNのメリットとしては、キャリアの選択肢が大きく広がる点が挙げられます。たとえば、管理職、教育職、公衆衛生の分野など、看護師としての幅広い活躍が可能になります。
一方で、BSN課程は学費が高く、入学に必要な英語力や学力も高めに設定されています。学習内容も専門性が高く、負担は大きくなります。
長期的に看護師としてキャリアアップを目指す方、アメリカで安定して働きたい方、ある程度の英語力や学力がすでに備わっている方にとっては、BSNルートは非常に有効な選択肢です。
代表的な大学には、カリフォルニア州San Francisco State Universityやテキサス州University of Texas at Arlingtonなどがあります。
入学には高卒相当の学歴証明や英文成績証明に加え、語学力証明(TOEFL iBT 80点以上・IELTS 6.0-6.5以上)が求められます。
卒業後はF-1ビザの資格で12ヶ月間のOPT(就労許可)が得られ、RNとしてアメリカ国内の医療機関で働くことができます。BSN保持者は、専門職要件を満たしやすいため、H-1B申請の可能性が比較的高くなります。
NP:RNのその先、専門職として働く
NP(Nurse Practitioner)は、大学院課程を修了し、診断・処方・治療など医師に近い役割を担える上級実践看護師の資格です。通常、RNライセンスと臨床経験を経て、修士課程(MSN)や博士課程(DNP)で専門分野を学びます。
収入の水準も高く、業務の裁量も広くなります。さらに、NP職はH-1BビザやEB-2カテゴリーの永住権申請に該当するため、就労ビザの取得や移民の観点でも有利な立場にあります。加えて、アメリカでは慢性的な医師不足によりNPの需要が高く、就職先の選択肢にも恵まれています。
一方で、NPになるためには時間と費用、そして高度な英語力が求められます。大学院進学にあたってはTOEFLスコアやGPA、推薦状などの厳格な条件を満たす必要があります。
医師に近い専門性を持ちたい方、高収入やビザの面でも優位に立ちたい方、そして将来的に永住権を確実に狙いたいという方にとって、NPは非常に魅力的な選択肢です。
よくある質問(FAQ)
Q. 日本の看護学士はアメリカのBSNと認められますか?
A. 多くの大学院や教育機関で、WESやECEなどの学歴評価機関を通じて「BSN相当」と認められることがあります。ただし、RNライセンス取得にはNCLEXの合格が別途必要です。
Q. ADNからNPになることは可能ですか?
A. 可能です。ただし、ADN取得後にRNとして経験を積み、RN to BSNやRN to MSNのような学士レベルの橋渡しプログラムを経て、大学院に進学する流れになります。
Q. 40代からでも間に合いますか?
A. はい。実際に40代・50代から看護師留学をして成功している方も多くいます。大切なのは、明確な目標と継続して動き続ける姿勢です。
最後に
アメリカで看護師になる道はひとつではありません。ADN、BSN、NP――それぞれの道にメリットとデメリットがあります。大切なのは、「自分が最終的にどうなりたいのか」を軸にして進路を選ぶことです。
近道はないかもしれませんが、確実な道はあります。必要な情報を手に入れ、ひとつずつステップを踏んでいけば、あなたにもアメリカで看護師として働く未来は開けます。
この記事が参考になれば嬉しいです。
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