
介護士資格の互換性はある?| オーストラリアとニュージーランドで働く
オーストラリアとニュージーランドは、コモンウェルス協定のもと、さまざまな資格に互換性があります。
たとえば正看護師の資格もその一つで、両国を行き来しながら働く看護師も少なくありません。
では、介護士の資格はどうでしょうか?
看護師を目指す途中で、まず介護士としてキャリアをスタートする方も多いかと思います。
この記事では、オーストラリアとニュージーランドにおける介護士資格の互換性や、実際に活用する際の注意点についてわかりやすくご紹介します。
Index
オーストラリアとニュージーランドの介護士資格
オーストラリアでは介護士にあたる職種を「アシスタント・ナース(AIN)」と呼び、ニュージーランドでは「ヘルスケア・アシスタント(HCA)」と呼ばれています。
それぞれの国で介護士として働くために、一般的に取得される資格は次の通りです。
- オーストラリア:Certificate III in Individual Support(またはHealth Services Assistance)
- ニュージーランド:New Zealand Certificate in Health and Wellbeing(Level 3または4)
資格の呼び名は異なりますが、学校に通う期間や取得の難易度はほとんど変わりません。
実は、両国とも介護士として働くには、法的に資格は必須ではありません。就職活動がうまくいけば資格なしで働ける事を指しますが、現場では資格保持が強く望まれる実状があります。
特に病院での勤務を希望する場合、雇用主は資格の明示的な証明を求める傾向が強いため、資格の互換性は「使える可能性はあるが、証明手続きが必要」というのが現実です。
このあとの章では、こうした介護士資格が両国でどの程度通用するのか、その互換性について詳しく見ていきましょう。
資格の互換性
結論から言うと、オーストラリアとニュージーランドの介護士資格には一定の互換性があります。ただし、「そのまま自動的に使える」というわけではなく、評価・申請の手続きが必要です。
たとえば、オーストラリアで取得できるCertificate IIIは、ニュージーランドの資格フレームワーク(NZQF)上ではおおむねLevel 3に相当します。これは、ニュージーランドでHCAとして働くための基準に合致します。
一方、ニュージーランド側ではLevel 4の資格を保持しておくと、より専門的なケアやリーダーシップを担える資格とされ、給与面でも評価が上がる傾向にあります。ここで注意したいのは、互換の「方向性」です。
ニュージーランドでLevel 4の資格を取得しても、オーストラリアではCertificate III相当と見なされることが多く、Certificate IVとして認められるには、別途RPL(Recognition of Prior Learning)を通じてユニットの評価や追加履修が必要になります。
逆に、オーストラリアのCertificate IV in Ageing Supportを取得しておけば、ニュージーランドではLevel 4と明確に認定されやすく、給与面やキャリアの面でも有利になります。なお、Certificate IVのコースは州によって提供機関に差がありますが、特にNSWやVICでは比較的多くの選択肢があります。
注意点
互換性があるといっても、現場にスムーズに入るにはいくつか注意が必要です。
まず、ニュージーランドでオーストラリアの資格を活用したい場合、NZQA(ニュージーランド資格庁)による国際資格評価(IQA)を受けます。
これにより「このCertificate IIIはNZレベル3に相当」といった公的な証明が得られ、ビザ申請や雇用契約時に安心材料となります。
逆に、ニュージーランドの資格(特にHealth & Wellbeing Level 4など)をオーストラリアで活用したい場合は、オーストラリアの登録研修機関(RTO)にて Recognition of Prior Learning(RPL)の審査を受ける必要があります。
また、病院などで勤務する場合には、以下のような追加要件が求められます:
- First Aid(応急処置)資格:ほとんどの医療・介護施設で必須または強く推奨。
- 健康診断・ワクチン証明(特に結核・COVID-19など):採用時に確認されます。
- 犯罪歴の確認:特に子どもや高齢者に関わる職場では必須。
- 英語力:資格での証明は通常不要ですが、面接や現場でのやり取りをこなせるレベルが求められます。
- 実務経験:病棟や配属先によっては、一定の経験年数(例:2年以上)を条件とすることもあります。
双方向での資格の活用を考える方は、それぞれの国の認定手続き(IQAやRPL)を通して、「制度上の互換性」をしっかり証明できるように準備しておくことが大切です。
とはいえ、雇用主や施設ごとの方針によっては、書き換えた資格が受け入れられないケースがあることも覚えておきましょう。
就労ビザ獲得の観点
オーストラリアやニュージーランドで介護士として働くためには、資格だけでなく、就労ビザの取得が不可欠です。それぞれの国で代表的な制度を見ていきましょう。
ニュージーランドで介護士として就労する場合、Accredited Employer Work Visa(AEWV)と呼ばれる就労ビザを活用することが一般的です。
AEWV取得には、政府に認定された雇用主(Accredited Employer)から、フルタイム雇用のオファーを受けることが条件です。
また、一定条件下で介護士として2年間フルタイムで働くと、Care Workforce Work to Residence Visaと呼ばれる永住権の申請も可能です。
次に、オーストラリアでAINとして就労する際には、以下のビザが代表的です:
- Temporary Skill Shortage visa(TSS, subclass 482)
介護職(Aged or Disabled Carer)は一部の州・職場でスポンサー付き雇用が可能です。雇用主の支援を受けて申請します。英語力証明(通常IELTS 5.0以上)、健康診断、無犯罪証明などが必要です。 - Aged Care Industry Labour Agreement
高齢者ケア業界では独自の労働協定(Labour Agreement)により、より柔軟に海外人材を受け入れています。この協定を結んだ施設であれば、年齢制限の緩和や英語基準の緩和が可能な場合があります。
オーストラリアで介護士永住権を狙うためには、スポンサー付きの就労ビザで働き、ENSなどの永住ビザへ移行するルートが一般的です。
いずれの国でも「資格があるから就労できる」わけではなく、「雇用主の受け入れ体制」と「ビザ要件を満たすかどうか」が実際の可否を分けるポイントです。
介護士の資格を取得することよりも、ビザをサポートしてくれる就労先を確保することの方が難しいことを忘れないようにしておきましょう。
最後に
以上、オーストラリアとニュージーランドにおける介護士資格の互換性と注意点をご紹介しました。
両国には資格制度の共通点が多く、看護師や介護士としての経験やスキルを活かして、国境を越えて働くことは十分に可能です。
ただし、「制度上の互換性」があるからといって、必ずしも「そのまま働ける」とは限りません。資格の証明や現地の雇用要件にしっかり対応することが求められます。
とはいえ、事前にしっかり準備をすれば、キャリアの幅を広げ、両国で活躍できるチャンスは大いに開かれています。
ぜひ、ご自身の経験と資格を武器に、新しい環境への一歩を踏み出してみてください。
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