海外で看護師登録:国別「必要な就労経験」まとめ(NZ・豪・英・加・米)
海外での看護師免許書き換えを考えるとき、最初に確認すべきなのが「就労経験の要件」です。ここは国によって大きく異なり、誤解も多いポイントです。本記事では各国の規制当局の一次情報のみに基づいて、必要な情報だけを端的にまとめます。
最終確認日:2026年7月(要件は変更されることがあります。申請前に必ず下記の一次情報をご確認ください)
Index
早見表
| 国 | 必要な就労経験 | 期間の縛り | ブランクがある場合 |
|---|---|---|---|
| ニュージーランド | 登録後、通算1,800時間以上 | なし(※) | 直近10年より古い場合は追加情報を求められることがある |
| オーストラリア | 直近5年間に450時間以上 | あり(5年) | 満たさない場合は再就労・監督下実務・re-entryプログラム等 |
| イギリス | 最低就労時間の要件なし | — | 登録申請には影響なし |
| カナダ(BC州) | 固定の時間数要件なし | 実質10年 | 10年以内の教育修了・実務がないとbridging等の追加教育が前提 |
| アメリカ | 最低就労時間の要件なし(州による) | — | 免許取得には影響なし(就職・ビザでは経験を求められることが多い) |
ニュージーランド(NCNZ)
要件は「Registered Nurseとしての登録後実務が通算1,800時間以上」です。2023年12月の制度改正で従来のCAP(Competence Assessment Programme)が廃止され、理論試験+OSCE方式に移行した際、この1,800時間が正式要件(prescribed qualification)として定められました。
押さえるべき点は3つです。
- 「直近◯年以内」という縛りは要件本体にはありません。ただし実務時間が直近10年以内にない場合、Councilから追加情報を求められることがあります。
- 登録後の実務経験がまったくない場合は、申請自体ができません(新卒での書き換えは不可)。
- 申請窓口はTruMerit(旧CGFNS)です。1,800時間に達していない状態で申請すると、レポートはNCNZに送付されず、審査が遅れます。1,800時間を満たしてからの申請が原則です。
複数の勤務先の経験は合算できます。証明は勤務先発行の在職・勤務時間証明で行うため、合計で1,800時間に届く分の証明書を各勤務先から取得してください。1,800時間はフルタイム勤務でおよそ1年に相当します。
オーストラリア(NMBA/AHPRA)
全登録者共通のRecency of practice基準として、「直近5年間に450時間以上の実務」が求められます。
- 450時間は連続している必要はなく、5年間の合算で構いません。
- パートタイム・非常勤でも、看護師登録を保持した上で看護のスキルを用いる業務であればカウントされます。有給・無給も問いません。
- 看護教育課程中の臨地実習はカウントされません(登録後の実務のみ)。
- フルタイム換算で約3か月に相当するため、日本で短期間再就労すれば満たせる水準です。
満たさない場合は、NMBA承認の監督下実務やre-entryプログラム等が必要になります。なお、この基準は現在見直しの協議が行われており、今後時間数が変更される可能性があります。
イギリス(NMC)
NMCの海外申請(トレーニングを英国外で受けた看護師の登録)には、最低就労時間の要件がありません。新卒に近い状態でも申請可能です。
必要なのは、母国での看護師資格・登録、英語力証明(IELTS Academic 7.0/Writing のみ6.5、またはOET)、CBT(理論試験・日本国内で受験可)、OSCE(実技試験・渡英して受験)です。
注意点として、登録要件と採用要件は別物です。NHSや医療機関の求人では一定の実務経験を求められる場合があります。
カナダ(州ごとに規制)
カナダには全国統一の基準がなく、州の規制団体ごとに要件が異なります。代表例としてBC州(BCCNM)を挙げます。
BCCNMの標準IENルートには固定の時間数要件はありませんが、「過去10年以内に看護教育を修了している」または「過去10年間、継続的に看護実務を行っている」ことが審査通過の実質的な条件とされています。これを満たさない場合は、re-entryやbridgingプログラムの修了を経てからの申請が推奨されています。ブランクが長い・経験が少ない申請者ほど、追加教育の要求は重くなります。
なお、BC州は1回の申請でRNとLPN(準看護師相当)の両方を審査するため、LPNとして先に就労しながらRN登録を目指すルートも用意されています。
アメリカ(州ごとに規制)
アメリカにも全国統一の看護師免許はなく、州のBoard of Nursingごとに免許を取得します。そして免許取得(licensure)に関しては、最低就労時間の要件を課していない州がほとんどです。
基本の流れは、(1)単位・資格評価(CGFNS/TruMeritのCESレポート等)、(2)英語力証明(州により要否・基準が異なる)、(3)NCLEX-RN合格、(4)州Boardへの免許申請、です。つまり審査の中心は「就労経験」ではなく「看護教育の同等性」と「NCLEX-RN」であり、ブランクや経験不足が免許取得の直接の障壁になりにくいのがアメリカの特徴です。
注意点は2つあります。
- 州により細部が大きく異なります。たとえばカリフォルニア州は理論と臨地実習の同時履修(concurrency)の審査が厳格なことで知られ、日本の教育課程でも科目構成によっては追加履修を求められることがあります。
- 免許と就職・ビザは別問題です。就労ビザ(EB-3等)のスポンサーとなる病院・エージェンシーは、実務経験1〜2年を採用条件とすることが一般的です。「免許は取れるが、職を得るには経験が要る」という構造は理解しておく必要があります。
よくある質問
Q. 最後に看護師として働いたのが9年前です。NZは諦めるべきですか?
いいえ。要件は「通算1,800時間」であり、満たしていれば申請可能です。ただし実務が10年より古くなると追加情報を求められる可能性が高まるため、動くなら早いほうが有利です。
Q. 複数の病院で働いていました。証明は全部必要ですか?
合計で1,800時間を証明できれば構いません。1か所で足りるならその1か所、足りなければ複数から取得してください。
Q. 日本でパート・バイトの再就労でも豪州の450時間になりますか?
なります。看護師免許での勤務であれば、雇用形態や常勤・非常勤は問われません。ただし免許(籍)が有効であることが前提です。
Q. 実務経験ゼロ(新卒)でも書き換えできる国は?
イギリスとアメリカ(多くの州)は可能です。NZは不可、豪州・カナダも実務なしでは追加要件が課されます。
一次情報(出典)
- NZ官報:Nursing Council of New Zealand Registered Nurse Scope of Practice and Prescribed Qualifications Amendment Notice 2023(2023-gs5021) https://gazette.govt.nz/notice/id/2023-gs5021
- NCNZ(IQN要件ページ) https://nursingcouncil.org.nz/IQN/IQN/H5.aspx
- TruMerit CVS-NCNZ(FAQ・ハンドブック) https://ncnz.trumerit.org/
- NMBA Registration standard: Recency of practice(AHPRA) https://www.nursingandmidwiferyboard.gov.au/registration-standards.aspx
- NMC: Register as a nurse or midwife if you trained outside the UK https://www.nmc.org.uk/registration/joining-the-register/register-nurse-midwife/trained-outside-uk/
- BCCNM: Internationally educated nurses https://www.bccnm.ca/RN/applications_registration/how_to_apply/InternationalEN/Pages/Default.aspx
- NCSBN: U.S. Nursing Licensure for Internationally Educated Nurses(IENリソースマニュアル) https://www.ncsbn.org/nursing-regulation/licensure/internationally-educated-nurses.page
